■購入について


 市販の「金魚の飼い方」等をめくってみると「購入は信頼のおけるショップで」などと、まるで絵に描いた餅のようなことが書いてある。「で、どうやってその信頼のおけるショップとやらをみつけんのよ」と思わず突っ込みたくなるが、その辺を考慮してかどうか定かではないが、良いショップの見分け方を記している本もあるようだ。その見分け方とやらを列挙してみると、

1.陳列水槽で泳いでいる金魚がみんな元気
2.病気に罹っている金魚がいない
3.店員の対応が親切丁寧
4.わからないことを質問しても誠実に対応してくれ、かつ知識が豊富

と、そんなようなことが書いてある。
 おいおい、ちょっと待てよ、と。
 そもそも陳列水槽を一瞥しただけで健康状態の善し悪しが分かるぐらいなら入門書など読んでいないだろうし、病気かどうかなど全身白点まみれやイカリ虫ぶら下げ遊泳中など、よほど酷い状態にならないと素人目には判別できない。3に至っては別に金魚屋に限った話ではなく、一般的な店選びの基準ではないか。まったくもって現実的ではない。
 加えて4を鵜呑みにして、初心者モード全開で店員にアレコレ質問すると、かなり悲惨というか憤慨する状況に陥るので気を付けた方が良い。独断と偏見で4についてもっと突っ込んで書いてしまうと、そもそもショップで売られている当歳魚は、おしなべて値段が安いわけだ。長ものと呼ばれるコメットや朱文金で200円〜250円、流金やデメも似たようなもの。オランダや丹頂、茶金やパールスケールといったものでも300円〜500円ぐらいだろう。一尾売ってショップの利益がどのくらいになるのかは知らないが、その程度の価格のものにアレコレ質問しても、誠実に対応してくれるかというと、かなり疑問である。それでも水槽から濾過装置、その他様々な備品に至るまで一式全てをそのショップで買っているのなら大分事情は違ってくるであろうが、60cm以下の水槽に限って言えば、安売りのホームセンターより安いショップというのは目にしたことがないので、懐に余程余裕があるお大尽以外はホームセンターで買ってしまうのも仕方のないところだ。
 値段の張る水槽その他はホームセンター、安い生体はショップというのでは、ショップ店員の態度も押して知るべしだ。加えてアクアリウムの総合店ではメインは熱帯魚や海水魚、大型淡水魚や水草水槽の備品などで金魚はオマケ的扱いの店が多い。「オマケなんだから煩いこと聞かないで、自分で選んで好きなの買ってってくれよ」というのがかなりの部分、本音に近いのではないだろうか。
 ぶっちゃけて言えば、良いショップや信頼のおけるショップなどというものは、自分で失敗を繰り返しながら取捨選択していくしかないのだ。「あそこはダメ」、「ここもダメ」、「あっ、ここは割といいかも」というように。そうこうして5年も過ぎる頃には当歳魚を購入するショップは1店か、多くても2店に絞られてくる。これは意識して絞っていくというより、自然と他のショップでは買わなくなるだけなのだが。
 と、ここで終わりにしてしまっては身も蓋もないし、せっかくここを読んでくれた皆さんに申し訳ないので、独断でいくつか目安になるものを挙げてみよう。

 まず、余程よんどころない事情でもない限り、ホームセンターのペット売り場で買うのは避けた方がいい。まずもって状態の良い金魚というのはお目にかかったことがない。落ちた個体が水槽に浮かんでいるなどは論外だが、それに近い状態だと考えてもあながち間違いではないだろう。しかしこれはホームセンター側の事情を考えれば、仕方のないところかと思う。マニアは間違ってもそんなところでは買わないから、買っていくのは初心者ばかり。アルバイトの店員は入ったらたまたまペット売り場に回されただけで、知識もなければ熱意もない。ペット担当の社員から言われるままに仕事をこなしているという状況では、水質管理などに気が及ぶべくもないだろう。
 一番間違いのない方法は、身近に金魚マニアがいれば、その人に聞くことだが、確率はかなり低いだろうし、仮にいたとしても「養魚場から直」などと言われてはへこむこと必至である。ここでは周りの助けは無いものとして話を進めよう。
 総合店はかなり微妙である。ホームセンターのペット売り場より確実に状態は良いのだが、そのレベルがピンキリというのが実情だ。ほぼベストと言えるほど管理が行き届いている店もあれば、ホームセンターよりは幾らかマシという店もあったりして幅が広すぎる。後に述べる専門店が車で1時間以内のところに無く、ホームセンターを除くと総合店しか選択肢がないという場合、無責任なようで申し訳ないのだが、素人なりに何とか判断を付けて「エイヤッ!」と、とりあえず買ってみるしかないだろう。例え最低レベルの店に当たったとしても、それでもホームセンターよりはマシな筈だから。
 さて、養魚場や生産者直を除くとして、一番良いのは、意外に思われるかもしれないが、水槽が3つか4つぐらいしかない、爺さんか婆さんが暇つぶしにやっているような店。この手の店は暇つぶしの割に年のせいか変に頑固なところがあって、状態の良くない金魚はまず売らない。極端な話、水槽の中のコレをくださいと言っても「それはあんまり良くないからダメ。分けよう(隔離するの意)と思ってたところだから」などと言って、売ってくれないことさえある。その代わり普通に売ってくれるものにはまず間違いがない。水槽の数が少ないから良く目も届くし、管理も行き届いている。デメリットは金魚の絶対数が少ないので、好きな品種がないことがあるところだが、それでも当歳魚の入荷が始まる春頃に希望を言っておくと、取り寄せてくれたりしてかなり重宝する。
 私の行く店も、どう贔屓目に見てもそれで喰っていけるようには見えないので、やはり道楽なのだろう。こういう店もかなり希少になってしまったので、現実的な選択としてはやはり総合店になるのだろうが、最初から変にマニアックな頂天眼だの水泡眼だのを買わなければ、何とかなるはず。このサイトが何とかします。(ここ、笑うところ)

 さて、首尾良く金魚を手に入れたアナタは小脇に酸素のパンパンに詰まった金魚袋を抱えているわけだが、これを家に持ち帰る際に許される時間的余裕はどのくらいだろうか?入門書等には「2、3時間は大丈夫」などと初心者にうっちゃりを喰らわすような極めてアバウトなことが書かれているが、これは出版物という性格上仕方がない。アナタの買った金魚の大きさもわからなければ尾数もわからないのだから。かといってまさか「個々のケースによります」とは書けないだろう。結局のところ2、3時間などというどうとでも取れる表現に落ち着くのだが、実際問題として当歳〜2歳ぐらいで5尾ぐらいまでなら、ギリギリ1時間というところだろう。これは家に着いてもすぐに水槽に離せるわけではなく、温度合わせや水合わせに時間を取られるからだ。そしてこれは忘れがち、というか何故かどの本やサイトでも取り上げられていないのだが、環境の変化に伴うストレスに抗するだけの体力的なマージンを残しておかなければならないので、そこから逆算しても経験上、1時間が限度なのだ。この体力的マージンが底をついていると、その日は何とか乗り切っても、2日後、3日後に天に召される確率が飛躍的に高くなる。水槽が替わるというのは金魚にとって想像以上のストレスが伴う。一番環境が激変する導入段階では慎重を期すに越したことはないのだ。


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